被験者番号198662番

poor thinking is futile

「真っ赤な闇」2019年7月23日の日記

f:id:anonymous62:20190724033118j:plain五関晃一くん主演、中屋敷法仁さん脚本演出の公演『奇子』を観劇して参りました。
原作は「手塚治虫の嫌な話…」という程度の知識しかなく、ただうっすら抱いている作品の雰囲気が五関くんに合っている気がしたのと、演出が中屋敷さんということでチケットを取ろう!と申し込みました。
それからネタバレあらすじ解説で概要を知ろうと思ったのですが、文字だけだと人物が上手く頭に入ってこなかったのでなんとなくの流れが入っている…という程度のまま挑みました。原作のキャラクターの外見や舞台に描かれなかった部分を考えるのはノイズになるので読まないでおこうと。これから読みたいけど、どうかなあ。手塚治虫の絵、怖いんですよ。
土蔵に閉じ込められる少女とラストから、紀伊國屋ホールとはなんてこの作品にぴったりの劇場だろうと思った。小さいけれど、あの世界にぐいぐいと引き込まれるちょうど良さ。
話の組み立て方としては見易かったと思う。中屋敷作品を見ているからかな。そして幕開きからいきなりラストのあの空間にいるので、暗闇の中に光が当たるように浮き上がる天外家の醜い真実に息苦しくなる。
五関くんも良かったけれど、駒井蓮ちゃん、そして誰よりも深谷由梨香さん!!が、印象的だった。由梨香さん(と三津谷)はほぼ中屋敷さんの身内というか、そういうあれだけあって彼の舞台の完成図を理解しているんだなあという感じ。私は元々由梨香さんが好きで、『発情ジュリアス・シーザー』のブルータスの端正な格好良さが今でも忘れられないのですが、和服を着ているというだけであれを思い出す…。
冷たい瞳の美しい女。ひたりひたりと纏わりついてくる濡れた罪と天外の闇に食い殺された存在。
そして、もう一人の女、奇子。正直原作の紹介で謳われるような妖艶な美しさというのは違うかなーなんて失礼なことを思いながら見ていたけれど、どんどん彼女の幼さを残しながらも蠱惑的で色気のある表情、白くすらりと細い腕や脚に、とんでもなくおぞましいどろりとした欲と業に汚されながらも無垢であり続ける女の魅力を感じてしまい、恐怖を覚えた。もう、最後は彼女のあどけない歌声が怖くて怖くて。手足の使い方もとても綺麗。

なんか、すごいものを観てしまったなあ、という気持ち。そしてこの作品に五関くんが出演したということがとても嬉しい。
五関くんのあっさり、さっぱりとした声や話し方が気持ち良かった。自分が生きていく為の最適解をすぐに見付けられるような。勿論苦しんで苦しんでやってはいたけれど、その道を選ぶこと自体を後悔していなさそう。
変な話だけれどストーリーに集中し過ぎて彼が『五関晃一』と言うことを忘れていたので、銃撃戦で軽やかに舞う姿を見て「あ、そうだ五関くんだ!」と思って感動した…。

やはり感性を刺激されるのは良いものですね。
二年前の私も観劇していて、とにかく楽しかったな。
週末が楽しみですが、ちょっと怖い、です。